~ 目次 ~
1. 今回やりたいこと
ラジコン操縦アプリに車速を表示して、運転してる感を満喫できるように改良しました!

2. 動作原理
2.1. 並列処理(マルチコアを使用)
スマホ側、マイコン(ラジコンカー受信機)側にそれぞれ並行処理を入れました。
今回はスマホ側とマイコン側でどちらも送受信の処理をする必要があったので、並列処理を使いました。マイコン側にはマルチコア1という並列処理を使いました。マルチスレッドという並行処理の方法もあるのですが、今回の場合は上手くいきませんでした。
スマホ側がマルチコアかマルチスレッドかは分かりませんでした。(Androidアプリ側がプロセスをコントロールことはないらしい?2)
2.2. スマホアプリと受信機(ESP32)の処理
フローチャートを書きました↓↓。スマホ側と受信機側でそれぞれ2つの処理をしています。
~ スマホ側 ~
- 処理1:受信機(ESP32)から車速を受信してスマホ画面に表示
- 処理2:操縦用の命令を受信機(ESP32)に送信
~ 受信機側(ESP32)~
- 処理1:操縦用の命令をスマホから受信し、ラジコンカーのESCとサーボモータを制御
- 処理2:センサ入力から車速を計算してスマホに送信
3. 改良の過程
3.1. スマホアプリの改良
ラジコン用スピードメータを表示するアプリと、ラジコン操縦アプリを統合しました。
マイコンから車速を受信する周期と操縦信号を送信する周期は違うので、それぞれ別のブロックに分けてタイマーを追加しました。


3.2. レシーバ側プログラムの改良
/* Happy_RC_Receiver(version 8a) *****************************
Download a Transmitter App:https://github.com/TomokiIkegami/Happy_RC_Driver/raw/main/Happy_RC_Driver.apk
About this Project:https://github.com/TomokiIkegami/Happy_RC_Driver
◆ 動作
1.スマホアプリ(Happy_RC_Receiver)から命令(ステア、スロットルのパルス幅)を取得
2.取得した命令に基づいて、RCを前後左右に操作
3.動作1,2と同時に、車速を計算してスマホに送信
◆ 機能
・アプリを開いていないときは、車体を停止させる安全機能を装備(Dragブレーキ付きESCを使用すること)
・アプリ再起動時には、スロットルを中立に戻さないと走行しない(アプリ再起動時に急に走行する危険を防ぐため)
・カクカクではなく滑らかな走行が可能
◆ 補足
・プログラム中で★マークがついている部分は、自分の装置に合わせて調整
*************************************************************/
/*ハードウェアの接続ピンの設定*/
#define LED_PIN 2 //走行には無関係。2番ピンにLEDのアノード(+)を接続すると割り込み処理の間隔(100ms)でLEDが点滅
#define LED_PIN_ACTIVE 17 //走行には無関係。17番ピンにLEDのアノード(+)を接続すると、アプリ起動時のみLEDが点灯
#define SERVO_PWM_PIN 4 //サーボモータのPWMピン(信号入力ピン)をESP32の4番ピンに接続 ★回路と対応した番号にする
#define ESC_PWM_PIN 16 //ESCのPWMピン(信号入力ピン)をESP32の16番ピンに接続 ★回路と対応した番号にする
/*タイマーの定義*/
hw_timer_t*timer = NULL;
/*マルチタスクに使うタスクハンドルを定義*/
TaskHandle_t thp[1]; // マルチスレッドのタスクハンドル格納用の変数(スレッドの数に応じて添え字の数を変更)
int num = 0;
/*ライブラリ*/
#include "BluetoothSerial.h" //ESP32のBluetooth通信に使用
#define PI 3.141592653589793 //円周率
/*Bluetooth通信に必要*/
BluetoothSerial ESP_BT; //ESP_BTという名前でオブジェクトを定義
/*ステアとスロットルの設定*/
int PWM_period = 20000; //PWM周期をT=20000[μs]に設定
int center_pos = 1500; //ステア中心位置 [サーボモータ中心位置のパルス幅 (1500)]
int neutral_pos = 1500; //中立位置 [スロットル中立位置のパルス幅 (1500)]
int CH1 = center_pos; //パルス幅Tonを1500[μs](中立)に設定。データシートにはLeft=900[μs]、Neutral=1500[μs]、Right=2100[μs]と記載されていた。(HiTEC DB777WP)
int CH2 = neutral_pos; //パルス幅Tonを1500[μs](中立)に設定。
/*プログラムの流れを制御する変数*/
int flag = 0; //アプリの起動状態を管理する変数。アプリがバックグラウンドに入ったときは1に設定する。アプリがバックグラウンドから復帰し、アプリのPボタンが押されたら0に設定してラジコン操作を有効にする。
String input = "1500,1500"; //入力信号
unsigned long t1 = 0; //データ受信時間
unsigned long t2 = 0; //割り込み時の時間
unsigned long td = 0; //データ受信時間と割り込み時間の差
/*パラメータ設定*/
const int sense_pin = 25; //★回路に合わせる。今回は25番ピンを使用。
const double z1=14; //ベベルギアの歯数[枚]
const double z2=38; //リングギアの歯数[枚]
const double D=95; //タイヤの直径[mm]
/*センサ関連の設定*/
const int th = 3800; //センサ閾値
int val = 0; //センサ出力値
int output = 0; //パルス出力(0/1)
int y[50]; //パルス列を保存する配列
int count = 0; //パルスのカウント値
/*速度計算関連の変数*/
double f = 0; //周波数[Hz]
double v,v_kmh = 0; //速度v:[m/s], 速度v_kmh:[km/h]
int f_int = 0 ; //周波数(整数)
int v_kmh_int = 0 ; //周波数(整数)
uint8_t f_uint8 = 0; //周波数(符号なし8bit[2byte]整数)
uint8_t v_kmh_uint8 = 0; //周波数(符号なし8bit[2byte]整数)
/*割り込み関数onTimerで実行される内容*/
void IRAM_ATTR onTimer() {
digitalWrite(LED_PIN, !digitalRead(LED_PIN)); //前の出力と反転して点灯(チカチカする)
t2 = millis(); //割り込み時の時間を測定(100ms間隔)
td = t2 - t1; //割り込み時の時間と命令取得時間の差を取る。この差が大きいとき、アプリは起動していない状態。
}
/*PWM制御でサーボモータの角度を制御する関数*/
void change_ST_pos(int goal_pos) {
/*20000[μs]周期で幅CH1[μs]のパルス波生成*/
digitalWrite(SERVO_PWM_PIN, HIGH); //PWMピンの電圧を5[V]に
delayMicroseconds(goal_pos); //パルス幅(goal_pos=900~2100[μs]:DB777WPの場合)
digitalWrite(SERVO_PWM_PIN, LOW); //PWMピンの電圧を0[V]に
delayMicroseconds(PWM_period); //制御周期(T=20000[μs])
}
/*PWM制御でスロットルを制御する関数*/
void change_TH_pos(int goal_pos) {
/*20000[μs]周期で幅CH1[μs]のパルス波生成*/
digitalWrite(ESC_PWM_PIN, HIGH); //PWMピンの電圧を5[V]に
delayMicroseconds(goal_pos); //パルス幅(goal_pos=900~2100[μs]:DB777WPの場合)
digitalWrite(ESC_PWM_PIN, LOW); //PWMピンの電圧を0[V]に
delayMicroseconds(PWM_period); //制御周期(T=20000[μs])
}
/*文字列を分割するための関数(分割数を戻り値とする)*/
void split(String data, char delimiter, String *dst) {
// data:分割したい文字列、delimiter:区切り文字、*dst:分割後の文字を入れる配列
int index = 0; //分割後の文字をどこに入れるか決める
int i; //カウンタ変数
int datalength = data.length(); //文字列の長さを取得
for (i = 0; i < datalength; i++) { //文字列を1文字ずつスキャン
char tmp = data.charAt(i); //tmp:文字を入れておく一時的な変数
if (tmp == delimiter) {
index++; //区切り文字があったら、配列の添え字を増やす
} else {
dst[index] += tmp; //文字を1文字ずつ結合して、文字列を作成
}
}
}
void Task2(void *args){
int i; //カウンタ変数
while(1){ // 無限ループ作成
/*フォトリフレクタから値を読み取り、パルスの生成*/
for (i = 0; i < 50; i++) { //0.01×50=0.5[s] 間隔で周波数を計算
val = analogRead(sense_pin); //センサの値などを読む
/**パルス作成**/
if (val < th) { //センサの前にシャフトの目印が通過したらパルス値を1にする
output = 1;
} else {
output = 0;
}
y[i] = output; //パルス出力値を保存
delay(10); //0.01[s] ごとに測定
}
/**パルス数計算*/
for (i = 0; i < 49; i++){ //0.01×50=0.5[s] 間隔で周波数を計算
if((y[i]^y[i+1])==1){
count++; //排他的論理和(EX-OR)でパルスの立ち上がり/立ち下がりを計算
}
}
/*周波数の計算、スマホに値を送信*/
f=((double)count/2.0)*(1.0/0.5); //周波数f[Hz]を計算
v=(D*0.001/2.0)*2*PI*f*(z1/z2); //周波数から速度[m/s]を計算
v_kmh=v*3600/1000; //[m/s]から[km/h]に換算
v_kmh_int = (int)(v_kmh*10); //速度を整数値に変換(10倍してスケール速度に変換)
v_kmh_uint8 = v_kmh_int; //速度を符号なし8bit整数に変換
ESP_BT.write(v_kmh_uint8); //速度をスマホに送信
count=0; //カウント値をリセット
/* シャフト周波数や車速をシリアルモニタに表示 */
// f_int = (int)f; //周波数を整数に変換
// f_uint8 = f_int; //周波数を符号なし8bit整数に変換
// Serial.print("f = "); Serial.print(f); Serial.print(" [Hz], "); //シリアルモニタに周波数(シャフト回転数)と速度を表示
// Serial.print("v_kmh = "); Serial.print(v_kmh); Serial.print(" [km/h]\n"); //シリアルモニタに周波数(シャフト回転数)と速度を表示
// ESP_BT.write(f_uint8); //周波数をスマホに送信ESP_BT.write(f_uint8); //周波数をスマホに送信
}
}
void setup() {
/*出力ピン設定*/
pinMode(SERVO_PWM_PIN, OUTPUT); //サーボモータのピンへ、ArduinoからPWM出力するように設定
pinMode(ESC_PWM_PIN, OUTPUT); //ESCのピンへ、ArduinoからPWM出力するように設定
Serial.begin(115200); //シリアルモニタで確認用。伝送速度を115200[bps]に設定
ESP_BT.begin("ESP32_RC_Receiver"); //接続画面で表示される名前を設定 ★好きな名前にしてよい
/*割り込み処理(アプリ停止の検知に必要)の設定*/
pinMode(LED_PIN, OUTPUT); //LEDの点灯ピンを出力用に設定
timer = timerBegin(0, 80, true); //80クロック1カウント
timerAttachInterrupt(timer, &onTimer, true); //onTimerという名前の関数で割り込み
timerAlarmWrite(timer, 1000000 * 0.1, true); //80クロック×1000000カウント=1秒、1*0.1=100[ms]
timerAlarmEnable(timer); //タイマー有効化
/*マルチタスクの設定*/
xTaskCreatePinnedToCore(Task2,"Task2",4096,NULL,1,&thp[0],0); //(タスク名,"タスク名",スタックメモリサイズ,優先度(1~24),タスクハンドルのポインタ,コアID(0か1))
}
void loop() {
if (ESP_BT.available()) { //available()で受信した文字があるか確認。あればif文内の処理を実行。
t1 = millis(); //データを取得した時間を記録
input = ESP_BT.readStringUntil(';'); //文字をセミコロン(;)まで読んで、文字列として変数inputに保存。
String cmds[2] = { "\0" }; //この配列に分割された信号を格納
split(input, ',', cmds); //文字列inputを分割&cmdsに保存
CH1 = (cmds[0]).toInt(); //CH1(ステア)の値
CH2 = (cmds[1]).toInt(); //CH2(スロットル)の値
// /*受信したパルス幅の表示*/
// Serial.print(CH1);
// Serial.print(',');
// Serial.print(CH2);
// Serial.print('\n');
}
/*Pボタンが押されたらラジコンの操作を有効する(安全のため)*/
if (flag == 1 && CH2 == 1500) {
flag = 0;
}
/*アプリ起動時(flag==0のとき)は操作を有効にする*/
if (flag == 0) {
change_ST_pos(CH1); //受信したパルス幅でサーボモータの角度を制御
change_TH_pos(CH2); //受信したパルス幅でスロットルを制御
}
/*シリアルモニタで確認用(ラジコンの制御には無関係)*/
Serial.print("v_kmh=");
Serial.print(v_kmh);
Serial.print(",");
Serial.print("Received signal=");
Serial.print(input);
Serial.print(",");
Serial.print("t1=");
Serial.print(t1);
Serial.print(",");
Serial.print("t2=");
Serial.print(t2);
Serial.print(",");
Serial.print("t2-t1=");
Serial.print(td);
Serial.print(",");
/*アプリがバックグラウンドに入ったとき(もしくは閉じたとき)、車体を停止させる処理(安全のため)*/
if (td > 150) {
Serial.print("Transmitter is NOT active"); //NOT active:アプリはバックグラウンド状態(もしく閉じている)
Serial.print("\n");
change_TH_pos(neutral_pos); //中立(Neutral)
input = " ";
digitalWrite(LED_PIN_ACTIVE, LOW); //アプリがバックグラウンドに入ったとき(もしくは閉じたとき)はLEDを消灯
flag = 1; //アプリがバックグラウンド状態に入った(もしく閉じた)ときはflag=1に設定
} else {
Serial.print("Transmitter is active"); //active:アプリの画面が開いている
Serial.print("\n");
digitalWrite(LED_PIN_ACTIVE, HIGH); //アプリ起動時(画面を開いているとき)にはLEDを点灯
}
}
4. 実験動画
加減速するように操作すると、車速も変化しています。楽しい!!
5. サンプルファイル
作成したアプリのデータはこちらになります。ラジコンカー用スピードメータの記事と同じように、センサを付けると車速が表示できます! ※シャフト駆動のオフロード4駆がおススメ
~ MIT App Inventorプロジェクトのファイル(.aia) ~
~ ビルド済み Androidアプリのファイル(.apk) ~
6. 関連記事
- 前回 →→→ Bluetooth モジュールでRCサーボ・ESCを制御したい [第12回-アプリデザインに関するTips]
- 次回 →→→ Bluetooth モジュールでRCサーボ・ESCを制御したい [第14回-走行用バッテリーからマイコンに給電]
- Bluetooth モジュールでRCサーボ・ESCを制御したい [第11回-接続状態表示のバグ修正]
- ラジコンカー用スピードメータ開発!
- Bluetooth モジュールでRCサーボ・ESCを制御したい [第7回-回路をシンプル&コンパクトに]
7. 参考文献
-
Qiita(Izumi Ninagawa)「ESP32でマルチコアを試す12行」、( https://qiita.com/Ninagawa_Izumi/items/5c3a9d40996836bd825f ) ↩︎
-
MIT App Inventor Forum「Is there any way to implement multi threaded tasks in app inventor?」、( https://community.appinventor.mit.edu/t/is-there-any-way-to-implement-multi-threaded-tasks-in-app-inventor/50254 ) ↩︎